こんにちは、つくばリサイタルシリーズ実行委員会です!
朝から晩まですっかり寒い季節になってしまいましたね…窓の結露に冬を感じる毎日です。
さて、今回は「リサイタルを百倍楽しもう」シリーズの第4弾ということで、江藤光紀作曲「さまざまな風―ヴァイオリン、マリンバ(ヴィブラフォン)、ピアノのための」の紹介をしたいと思います。
当委員会の顧問である江藤光紀先生書き下ろしの一曲。ヴァイオリン、打楽器、ピアノという異色のトリオで、出演者の方々からも「初めて」「楽しみ」との声が上がっています。
作曲の経緯やタイトルに込められた意味を知ると、新型コロナウイルスという未曾有の危機に瀕した状況だからこそ作られた一曲であることが分かります。
突然世の中が静まり返り、時の流れもが止まってしまったかのような不思議な日々を過ごしていました。それから感染の恐怖に加え、社会のあちこちから窮状を訴える声が聞こえてきました。
無風状態。そして激しい向かい風。この曲はそんな中で書き始められました。
(本人コメントより)
激しい風にあおられ、そしてその風がぱったりとやんでしまうような不安な気持ちをかきたてられながらも、再び吹き始めるさわやかで晴れやかな風のようなメロディに希望を感じる作品です。
第一楽章「向かい風を抜けて」では激しいリズムを奏でるマリンバのうえでさわやかなヴァイオリンの旋律が流れますが、やがて重苦しいリズムを刻むようになります。一転し静けさに包まれ三つの音色が緊張感のなかで絡み合い響き合いますが、最後には冒頭のさわやかなメロディが繰り返され、より力強く希望にあふれる雰囲気で締めくくられます。
第二楽章「草原の風、リトルネッロの鐘」では、ヴァイオリンとヴィブラフォンの歌うようなメロディの向こうからピアノとヴィブラフォンによる荘厳な鐘の音が聞こえてきます。それぞれの楽器が高らかに歌い、時には軽やかに踊るように色彩豊かな表情を見せます。軽快なステップ、荘厳な鐘の音、開けた青空のような晴れやかなメロディ。これらが幾度も重なり合って鐘の見下ろす草原の景色が浮かび上がります。
第三楽章「そしてまた走りはじめる」は名前の通り疾走感にあふれる楽章です。マリンバとピアノの力強く踏みしめるようなリズムの上をヴァイオリンの音色が前へ前へと進むように流れていきます。やがてシリアスな響きが現れ、ピアノの低音が響き渡る中ヴァイオリンとマリンバが対立するように旋律を奏でます。最後はその重苦しい雰囲気を乗り越え、推進力を持ったまま流れ込むように終わりを迎えます。
依然として気の抜けない状況のなか、様々な不安を抱えた人も多いと思いますが、その苦難を乗り越えた先の希望を感じる音楽です。
なにより、今回の演奏会特有の編成で奏でられる一曲、ぜひお楽しみに!
予習シリーズの第1~3弾はこちらです↓
【リサイタルを百倍楽しもう 第一弾!】シューベルト:ソナチネ ニ長調 Op.137-1 D.384 - つくばリサイタルシリーズ公式ブログ (hatenablog.com)
【リサイタルを百倍楽しもう第二弾!】水野修孝:ヴィブラフォン独奏のための三章 - つくばリサイタルシリーズ公式ブログ (hatenablog.com)
【リサイタルを百倍楽しもう 第三弾!】ロマンス 第一番 ト長調 作品40 - つくばリサイタルシリーズ公式ブログ (hatenablog.com)
文責:岩永(比文2年)