つくばリサイタルシリーズ公式ブログ

2024年6月9日(日) 第2回TRSサロンシリーズ『荒木奏美 染みわたるオーボエの調べ』 チケット→https://teket.jp/1479/33549

塙美里さんインタビュー【後編】

先日5月7日に今月開催の第1回TRSサロンシリーズにて出演される

塙美里さんにオンラインインタビューを行いました!

今回は前回に引き続きインタビューの後編となります!

委員会や筑波大学吹奏楽団の方から頂いた様々な質問に答えていただきました。

 

Q. 情感の伝わる演奏ができるためには、どうすればいいのでしょうか?

 感情を込めてそれがダイレクトに何の支障もなく伝わるというのはすごいことだと思います。技術と完璧な状態が整っていないと、100%伝わるというのはなかなかありません。

 練習の時には、「この感情を表現するには体のどこをどう使ったらいいか」というのを分析しています。しかしそれを舞台上で発揮するのも難しいことなので、舞台上では、冷静になりますね。「いまここに力入れちゃだめだな」とか「こういうポジショニングでいったら伝わりやすいぞ」とか。感情でえいっってやっても伝わらないので、そこは分析ですね。体の使い方とか息の通し方とかを分析して、いま一番いい状態だというのを耳で聴いて、吹く。それができないと、やっぱり自己満足になってしまいます。

 演奏中なにを考えるかは曲によって違いますけど、いかにいい状態で届けられるか、っていうことだけですね。良い状態であれば、曲の持つパワーやいい音色、息とかは絶対に伝わるはずなので、いかにうまくストレスなく脱力するかという感じですね。

 

Q. 体の使い方を意識するというのは、具体的な例だとどのようなことですか?

 大雑把にいうと、下っ腹なんですよ。おへその下を、上に向かって押し上げる感じで吹くと結構うまくいって、それができていないとどんなに体や指や息に気をつけてもだめなんですが、それをやり続けるのはかなり体力と体幹が必要なんです。だから毎日、朝に45分ランニングと、2時間の筋トレを行っています。一日10時間くらい立ちっぱなしで練習することもあるので、疲労しない程度に日々トレーニングをしながら生活しています。

 

Q. 音楽以外から、自分の音楽に良い刺激になっているようなことはありますか?

 私は小さいとき油絵と書道とピアノを並行してやっていたので、今も油絵を鑑賞するのが好きですし、書を書くのも好きです。小さい頃の記憶が自分の細胞にあって、それをやると落ち着く、というものはありますよね。そういうものがあると、演奏やストレス発散にも繋がっていると思います。運動も、私はもともと運動は得意ではなかったのですが、一種の克服のような感じでトライしたんです。

 じつはここ1年間で、13キロ減量したんです。少し胃腸の病気をしてしまって腸内環境を良くするためというのもあって、食生活を変えたり、いろいろトライしてやっているんですけど、それも結構うまくいって、なんでも自分でやってみて、楽しむっていうのが一番なんだなと。変化というのは楽しいですから、今は自分の体が変わっていくのが楽しくて、筋トレが趣味になっています。筋トレしているときも頭の中は楽譜のこととかを考えているので楽器から離れても勉強は続いているんですが、良い気分転換になってます。

 

Q. 日本と外国との音楽の違いについての話があったが、外国では、アマチュアはどのように演奏を楽しんでいるのでしょうか。

 音楽院にはいろんなコースがあって、そこで勉強できます。音楽院の日というものが週に一度あって、小さい頃から通うことができます。高校を卒業して音大に行く、となると毎日音楽院に通うことになります。日本では吹奏楽をきっかけに音楽を始めるという人が多いですが、外国ではクラブ活動がないので楽器を始めるのは個人しかありません。音楽院にはもう1つ年齢制限のないアダルトコースというものもあって、週に1回か2週間に1回程度の頻度でプロから30分くらいの個人レッスンを受けられます。そこでは、おじさんおばさんから若い子まで色々な人が通っています。

 それから、外国、例えばフランスでは音楽院はプロコースの扱いで、サックスフォン学科は1学年1人か2人しかいません。だからか、外国は少しシビアで、小さい頃から定期的に試験があります。そこで落とされてしまうと続けることができないんです。続けるには合格し続けるしかない。趣味で楽しんでいるうちもちょっとは頑張らないといけません。対して日本では、発表会で点数をつけられたり落大させられたりということはありません。日本の音大は、1クラス40人くらいで、プロになったのは自分だけでした。フランスだと音楽院は国立かつ20区各区+αにありますが、日本の音大は私立ですよね。芸術活動には国がお金を出していますから、そういったシステムの違いには社会の違いが反映されていると思います。ドイツでは1年間の学費が0で住居の援助金を出してくれるので、むしろお金がもらえたりします。弦とかピアノの人がよくドイツに留学に行きますが、本当にお金がかからないという話をよく聞きます。物価も安いですし。パリはその点物価が高めです。アメリカは学費も物価も高くてもう全部高いという感じです。アメリカに留学するのは本当にお金持ちじゃないと厳しいです。

 

Q. 塙さんが考えるサックスの魅力はなんでしょう。

 いろんなジャンルで活躍できる楽器という点はすごく良いところです。ただ、そこが都合の良くない点でもあったりして、長所でもあり短所でもあると思います。吹奏楽の中でのサックスと、ピアノとのアンサンブルのときのサックスとでは全然違いますし、お客さんの種類も奏者によって異なります。私のお客さんはサックスフォン奏者やサックスを好んで聴きに来ているという人は少ないです。でもほかの奏者だと吹奏楽をやっていた人やサックス奏者が聴きに来ることが多かったりしていて。奏者のカラーがあるのかもしれません。

 

Q. おすすめの演奏の聴き方はありますか。

 聴き手の自由でいいと思います。私自身が大切にしていることはさっき話しましたが、奏者が言っているからそう聞かなければいけないということはないです。大したことないなーなんて思いながら聴いてもいいですし、本当に自由。難しく考える必要はないです。どんなことでもそうですが、自分の五感とか、感性でもって楽しむことが一番だと思います。

 

Q. 当日来場するお客様に向けてメッセージをください。

 コロナ禍の中でコンサートにいらしていただけてありがたいです。つくばに限った話ではありませんが、こうしてコンサートを開催することは一年前では考えられなかったので、だんだんノーマルスタイルに戻っていることは素晴らしいことだと思います。だからこそ、お客さんに楽しんでもらえるよう、精一杯演奏します。

 

とても話が盛り上がり、長さの都合上インタビューの一部内容を省略しての公開となってしましたがいかがでしたでしょうか。

当日お越しいただく皆様には是非、世界各国で活躍する塙さんの音楽の世界観を楽しんでいただければと思います。

 

文責:松浦(社工3年)