つくばリサイタルシリーズ公式ブログ

2024年6月9日(日) 第2回TRSサロンシリーズ『荒木奏美 染みわたるオーボエの調べ』 チケット→https://teket.jp/1479/33549

塙美里さんインタビュー【前編】

先日5月7日に今月開催の第1回TRSサロンシリーズにて出演される

塙美里さんにオンラインインタビューを行いました!

貴重なお話をたくさん伺うことができましたので、

是非最後までご覧いただけたらと思います!

 

今回のプログラムの選曲と見どころについて

 まず私の活動の話になりますが、日本ではサクソフォンはアンサンブルのグループを組んで活動をされている奏者が多い中、フランス留学を経てフランスで学んだことをなるべくそのままの形で発信し、成長していきたいという思いが強く、ソリストとして活動をしています。ソロではいかに一人で自分の世界を表現してお客様を魅了するかを考えなければならず、準備もすごく大変でシビアなのですが、それをあえて続けています。挑戦するレパートリーに関しては、私はソプラノサクソフォンをメインでやっていて、ソプラノサクソフォンのオリジナル作品は少ないため、ヴァイオリンやフルートの曲を自ら編曲して演奏することが多いです。そういった曲は音域が高く演奏は難しいのですが、一生懸命練習をして自分のものにする過程を楽しんでいます。今回もヴァイオリンやフルートの曲をサクソフォンで演奏します。こういった演奏会はなかなかないと思いますのでお客様に楽しんでいただければ幸いです。

 見どころに関しては、とにかくソプラノサクソフォンを楽しんでいただけたらなという思いが強いです。というのも日本で私のようにソプラノサクソフォンをメインに演奏している奏者は他にいませんので頑張りたいと思っています。CDも出しているので是非きいていただきたいです。

 

フランスの音楽教育について

 フランスと日本では取り組む曲や教育が全く異なっていて、フランスに留学した時に大きな衝撃を受けました。フランスには、国立の音楽院があり、5歳からプロの奏者にサクソフォンをはじめ管楽器を、日本に比べかなり安価な費用で習うことができます。取り組む曲も日本ではある程度段階を踏まなければ現代音楽(調性がなくリズムやメロディーが複雑な音楽)には取り組みませんが、フランスでは遊び感覚で小さいころから現代音楽にも取り組むので、ソルフェージュ(楽譜から読み取る力)に長けています。私が留学をしたのは23歳の時だったので、フランス人との幼少期からの教育の差を痛感しましたが、その差を埋めるために必死で学んだので、そこで取り入れたものをもっと広めていきたいという一心でやっています。

 

クラシックサックスを始めたきっかけ、魅力

 私は3歳からピアノをやっていて、プロのピアニストを目指していましたが、中学生の時吹奏楽部に入りサクソフォンと出会い、指導していただいていた先生にサクソフォンを専門にすることを進められ、プロのサクソフォニストを目指すようになりました。サクソフォンという楽器は、新しい楽器で巷ではジャズやポップスのイメージが強いかもしれませんが、発明された当初はクラシックを演奏するための楽器だったんです。戦争があってその後アメリカでジャズの楽器として広まったという歴史があります。ですので、まず、そもそもサクソフォンはクラシックを演奏するためのものでありサクソフォンの原点なのだということを伝えたいです。サックスは音色感が人によって異なる楽器です。サックスはクラリネットと異なり、トランペットのようにベルが先端に行くにしたがってぶわっと広がっていて、音が広がりやすいです。音が広がる分、息の方向や強さ、コントロール、舌の位置によって全く音色が変わることが特徴です。同じサクソフォンでもジャズのような音色で口の中を広くして吹くアメリカンスタイル、アメリカンスタイルよりはクラシカルな音色のジャパニーズスタイル、最もクラシカルな音色で口の中を狭めて吹くフレンチスタイルがあります。プロでなければその違いを聞き分けることは難しいと思いますが、私はスタイリッシュ系のフレンチスタイルで吹いておりますので、そういったことも頭の片隅に置きつつ聴いていただければ嬉しいです。

 

現在の活動、力を入れていることについて

 コロナが始まってからは特に海外で活動を増やしたいという気持ちが強くなりました。一昨年に文化庁の海外派遣でスペインに1か月行き、演奏会を開いたりレッスンを受けたり教えたりしました。去年11月から1月にかけてはフランスで演奏会を開催したりスペインで講習会に講師として参加したりしました。先月はアメリカニューヨークのカーネギーホール等でリサイタルを行うなど、毎度PCR検査を受けて頻繁に海外に赴いています。日本人は「いつか落ち着いたら~」と多い人が多いですが、コロナは5~6年は収まらないと思うので、今のうちだと思って行動しています。ふたたび文化庁の海外派遣の派遣員に選ばれ、11月から3か月フランスで活動することになっており、準備を進めているところです。

 こういう時期だからこそ積極的に活動したいなと思っているし、こういう時期だからこそ(現地の人は)受け入れてくれやすいです。日本は警戒心が強くイベントも直前で中止になるケースもあるけれど、待っていたらチャンスも逃げて行ってしまいます。学生の皆さんも対策はしっかりとりつつ積極的に活動してほしいと思います。

 現在は年の半分弱を海外で活動する機会をいただくことができ、日本の学生と海外の学生ではレベルや反応が違うので、とても勉強になるし良い刺激を貰っています。

 

 

いかがでしたでしょうか?

インタビューは後編に続きます。

後編もお楽しみに!

 

文責:松浦(社工3年)