つくばリサイタルシリーズ公式ブログ

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中井恒仁&武田美和子ピアノデュオにインタビュー!Part.3

さて、Part.2の記事は読んでいただけたでしょうか?今回は、世界で活躍する中井恒仁&武田美和子ピアノデュオの技術的な面にスポットを当ててお送りします。

 

前回の記事はこちら!

中井恒仁&武田美和子ピアノデュオにインタビュー!part1 - つくばリサイタルシリーズ公式ブログ

 

目次

 

Q.江藤作品のように新作を演奏するときは、どのように取り組まれていますか。

武田

これまでにも新作には取り組んだことが何度かありますが、まずは楽譜を読んで音を出してみて、そこから感じる情景やイメージを一番大事にしています。あとは題名を参考にすることもありますね。

ただ、江藤先生のような現代の作曲家の新作を演奏するときは、演奏を直接聞いてチェックしてもらうことが多いです。作曲家も実際の音を聞いてみないとわからないみたいで、チェックしてから楽譜を書き直したりすることもあって。そうした共同作業で作っていくところがありますね。

中井

弾く側はあまり書き直してほしくないんですけどね(笑)

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笑い合う中井さん(左)と武田さん(右)

武田

そうだね(笑) 作曲家がいらしたときは、緊張しますね。これでいいんですかね?って(笑)。ただ、作曲家が頭の中で思い描いていたものよりも、良い作品にしたいという想いがいつもあって。思いがけなく、偶然かもしれないけど、頭の中で思っていたよりずっと良い演奏だなと感じてもらえるように頑張っています。

中井

基本的には楽譜からメロディーや和声の方向性は見えてくるのですが、そのなかで盛り上がるのか、穏やかなのか、どちらにでも解釈できるような箇所をどう演奏するのかを全体を通して考えてみて、迷う時もあります。作曲家が生きていらっしゃる場合には迷ったら直接聞くことができるので、今後もしかしたら江藤先生に聞くことがあるかもしれないですね。

(委員)

共同作業ができるって感じなんですね。

武田

そういう面もありますね。でも、楽譜から見えるものがかなりあるので、そこが一番大事かなと思います。

 

Q.演奏するときのコミュニケーションはどのように意識されていますか。

武田

意識をいろんな方向に向けないといけないのがピアノデュオの難しいところで、ソロの方が楽だと感じるときもあります。2人でいると、いつも一緒に二人三脚で走らなきゃいけないし、一緒にすべてのタイミングをとらなきゃいけない、っていう難しさがあるので。ずーっとくっついてるっていう(笑)。

そうして二人で合わせながら、本番ではさらにお客様や空間にどのように対応させていくかを考えるんですね。二人で弾きながら、ああしようこうしようってコンタクトを取っています。

あとは、もちろん楽器にも意識を向けます。2台ピアノだとどちらのピアノが鳴りやすいかという楽器の違いもありますし、1台のピアノでも高音の方が鳴りやすいとか鳴りにくいとか、いろんな響きの違いがあるんですね。なので、連弾でも2台ピアノでもバランスを瞬時にパッとコントロールしていくことが大事になります。いろんなところにアンテナを張り巡らすっていう感じですね。

中井

そうですね。練習では、まずは音を合わせてみてなんとなく馴染んでいくとこがあって。これは音でコミュニケーションを取っているわけです。ただ、なんとなくでは上手くいかない箇所がどうしても出てくるので、そこは言葉で話し合って、感じ方や表現の仕方を一致させることで、より自然に馴染んでいくようにしています。

演奏会の本番では、会場の響きや楽器の鳴り方、お客さんにどう届いているのかといった要素を、二人それぞれがコンタクトを取りながら作っていくという感じですね。会場が変わると相手の演奏も変わるので、どう音を拾うのか、どう相手に調和させるのか、どちらが目立つのか、そういうところに気を付けながら、全体的な感覚で弾くようなイメージですかね。

武田

曲によってどっちがメインなのか、どちらが指揮を執るのかといったり、その場その場で合わせ方が変わってくることもありますね。

 

 

Q.連弾やデュオを経験することで身につく、ソロにも活かせるよう力などはありますか。

武田

これはすごくたくさんあって、特に耳の聞き分け方がすごく良くなります。一台のピアノで連弾するときは、それぞれの声部を組み合わせて一つの音楽を作るので、自分のどの指がどの声部のラインを弾いているのかを聞き分ける力がすごく良くなってきて。一人で演奏するときはなんとなく弾きがちなのが、ピアノデュオを経験すると一音一音に対してもっと慎重になっていくんですね。

それと同時に、ピアノデュオで相手の音を聞いていると、相手のキャラクターや求めている音の方向性を無意識のうちに自分に取り入れていることがあります。例えば、彼(中井さん)のおおらかさや深みのある音とか大きなスケール感を知らず知らずのうちに自分のソロにもってきたり。だから一人で弾くときにも、以前より低音の響きの良さを求めるようになったりして、ちょっとずつ音楽の幅が広がる気がしますね。

中井

ピアノに馴染んで自分の想いを表現できるようになればなるほど、音が自分の都合の良いように聞こえやすくなるんですね。人間の耳は聞きたい音が聞こえるように出来ているので、バランスが悪いのにメロディーは鳴っているもんだと都合良く聞こえてしまう。それがピアノデュオでは相手の音があるおかげで、より客観的に聞こえるようになると思います。実は、客観的に聞くのと曲の世界観に入り込んで弾くこととのバランスをとるのは、すごく難しいことなんですが、ピアノデュオではそれが自然に身につきやすいです。

あとは、一人で弾いていると、自然に弾いてるつもりでも、自分だけで辻褄を合わせてしまって自己中心的で不自然な音楽になってしまうことがあります。でも、相手がいるとそういう流れでは合わなくなってくるし、ちょっとしたリズムにもより高い精度が求められるとかいうか。ピアノデュオでは、そういう感覚が研ぎ澄まされていきますね。その感覚がソロになったときに活きてくるのかなと思います。

 

 

Part.3は盛りだくさんな内容でお届けしました。演奏する人にも聴く人にも有益な情報が満載だったと思います。1月23日の第11回つくばリサイタルシリーズでは、お二人が演奏する姿を間近で見て感じることができます!ぜひ、お二人の音楽に身をゆだねてみてください!

チケットはこちら!

teket.jp

 

出演者概要

中井恒仁&武田美和子ピアノデュオ

日本で唯一、世界でも大変稀な、それぞれのソロとデュオ両部門で「国際音楽コンクール世界連盟WFIMC」加盟のコンクールで入賞しているピアノデュオ。夫妻で共に東京藝術大学ミュンヘン国立音楽大学大学院修了。6枚のCDをリリース。レコード芸術誌特選盤等に選出され、3枚のCDが全日空国際線オーディオ番組でも放送される。TVやラジオの出演や、音楽誌「ショパン」の連載やデュオ特集では表紙を飾る。アメリカ、ドイツ、イギリス、中国等、海外でも多くのリサイタルを行い「ナイトの称号を与えるべき音楽芸術」と最高級の言葉で新聞紙上にて高く評価される。フランス、韓国、中国の音楽祭に指導と演奏で招聘される。2014年久留島武彦文化賞受賞。

中井恒仁
日本音楽コンクール第3位、国際コンクールにおいて、ブラームス第2位、セニガリア第1位、ヴィオッティ'97第3位。現在、桐朋学園大学ピアノ部会主任教授、名古屋音楽大学客員教授

武田美和子
全日本学生音楽コンクール高等学校の部、東日本第2位、国際コンクールにおいて、マリア・カナルス第3位、ヴィオッティ'98第3位入賞。上野学園大学、埼玉県立大宮光陵高等学校、桐朋学園大学大学院講師。

 

part4はこちら↓

 

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