こんにちは。年を越して一層冷え込む日々ですがいかがお過ごしでしょうか?筑波大学周辺では先週雪が積もり、温暖な地域出身の私は雪遊びにはしゃぎました。
さて、楽曲紹介シリーズの最後は、カミーユ・サン=サーンス作曲『動物の謝肉祭』の解説をお送りします。
サン=サーンス(1835-1921)はパリ出身のフランスの作曲家です。オルガン奏者としても活躍しましたが次第に作曲に力を注ぎ、67年には万国博覧会記念コンクールで入賞するなど作曲家としての地位を確立していきました。
作曲に励む一方で、近代フランス器楽の発展と若手音楽家の発表の場の創出を目指し、国民音楽協会を創設したという経歴もあります。
『動物の謝肉祭』は14の小品からなる組曲です。仲間内の音楽界のために作られた曲のためもともとは12の楽器のために作られましたが、のちに管弦楽用に編曲され、サン=サーンスの死後人気を博しました。
それぞれには獅子やめんどり、らばなどの動物の名前が用いられたタイトルがつけられており、そのタイトルにかわいらしい印象を持たれる方もいるかもしれませんが、曲中にはほかの作曲家の作品のフレーズが用いられていたり、皮肉的な意味が込められていたりと、なかなか諷刺とユーモアが効いた作品となっています。
今回は管弦楽版について書いてみたいと思います。
第1曲 序奏と獅子王の行進曲
ピアノのトレモロと続く弦楽器による壮大な幕開けが印象的です。
ファンファーレのようなピアノの音色から勇ましいライオンを思わせる雄大な行進曲が始まり。ピアノと弦楽器が美しく掛け合います。
第2曲 めんどりとおんどり
ピアノの伴奏の上で弦楽器によって鶏の鳴き声が再現されます。
第3曲 らば
劇的なメロディを奏でながら、まるで駆け回るらばのように激しく音階を上下します。
第4曲 亀
よく聞いて見るとオッフェンバック『天国の地獄』の有名なメロディがのそのそと演奏されていることがわかります。
ピアノの軽やかな伴奏とのっそりとした弦楽器の対比が面白い曲です。
第5曲 象
この曲でもベルリオーズ『ファウストの劫罰』、メンデルスゾーン『夏の夜の夢』といった他作品からのパロディーが見られます。
コントラバスの低音がメロディを奏で、重みのあるワルツが繰り広げられます。
第6曲 カンガルー
ぴょんぴょんと跳ねたあとにゆっくりとしたリズムが繰り返され、跳びまわるカンガルーの姿が連想されます。
第7曲 水族館
涼しげで少し怪しげな、幻想的なメロディーが奏でられます。
のびやかな弦楽器と細やかなピアノの動きが印象的です。
第8曲 耳の長い登場人物
重々しいメロディが繰り返される楽曲です。まるでらばの鳴き声のような音色が奏でられます。
サン=サーンスに嫌味な評価を下した音楽評論家への皮肉の意味が込められているという説もあるとか。
第9曲 森の奥のカッコウ
深い森を思わせるゆったりとした音楽です。クラリネットがカッコウの鳴き声を模倣して演奏します。
第10曲 大きな鳥籠
フルートによって小鳥の鳴き声が再現されます。賑やかな鳥の声が軽やかに演奏される1曲です。
第11曲 ピアニスト
音階を上がったり下がったり、というピアノの練習曲を弾く楽曲です。わざと下手に弾くのが定番のようです。
特に終りの和音もなく、そのまま次の曲へ向かいます。
第12曲 化石
自作の『死の舞踏』やフランス民謡などを組み合わせて演奏しています。これに『化石』というタイトルを付けるところにブラックユーモアを感じます。
ピアノや打楽器の伴奏もあって軽やかで楽しげな印象です。
第13曲 白鳥
組曲のうち、生前楽譜が出版された唯一の曲です。単独で演奏されることも多く、チェロの独奏曲としても親しまれています。
流れるような優雅さのある曲で、水面の白鳥の様子がありありと浮かんできます。
第14曲 終曲
各曲の旋律が登場する終曲です。賑やかで華やかにフィナーレを迎えます。
以上、『動物の謝肉祭』の解説でした。
管弦楽ではいろいろな楽器の音色が活かされて演奏されていますが、これが2台ピアノではどのような楽曲になって紡がれていくのでしょうか。楽しみですね!
チケットも残りわずかとなっています。是非ご来場ください!
中井恒仁&武田美和子ピアノ・デュオ(第11回つくばリサイタルシリーズ)【つくばリサイタルシリーズ実行委員会】 | つくばカピオ ホール (teket.jp)
文責:岩永(比文3年)