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中井恒仁&武田美和子ピアノデュオにインタビュー!Part. 4

 

いよいよ今週末が本番!

「2台ピアノで奏でるオーケストラ ~名曲を旅する~」出演の中井さん&武田さんのインタビュー記事最終号です。 委員数名にピアノ愛好会の方も交え、さまざまに話が広がり打ち解けた雰囲気のインタビューになりました。

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      Contents

 

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Q. お二人が大学生だった頃、好きだった曲などお聞きしたいです。

(中井) (武田) (う~ん..... )

(武田) 考えてみたら、皆さんぐらいの時に私たちが聴いてたのって、けっこう今好きなのと変わらなくって、彼はベートーヴェンとかブラームスをやっぱり弾いてたし、私もリストとかモーツァルトとかやっぱり弾いてましたね。ショパンも。

根底にある好きっていうのは、けっこうこの歳になっても、

(中井) あんまり変わらない(笑)

(武田) あんまり変わらないし、言ってみるとまだ私は学生の様な気分なんです(笑)  時間が経っても、やってきてること、、まあおんなじことをやってるからかもしれないけど、皆さんぐらいの時のことも、昨日のことのように思い出してて、このときにこういうことを思ってこの曲弾いてたなとか、試験でドキドキしながらこれ失敗しちゃったなとか、けっこう、覚えてます(笑)

だから、もしかしたら歳を重ねても、若い時に好きって思って夢中になったものって、ずっと残ってて、それが根底にあるんじゃないかなと思います。

ただ、ノリが良い曲とかはいっぱい弾いてて、どっちかっていうと私たちは、ノリがいい曲が多いかもしれないですね。だからそういう楽しみもあります。

 

今回弾かせてもらう第九の「喜びの歌」のメッセージは、それこそベートーヴェンが二十歳の頃に出会った歌詞で、それを数十年間ずっと大事に温めて、伝えたい音楽とともに世に出したものです。リストという人も、二十歳の時にパガニーニという凄いヴァイオリニストの演奏を聞いて「僕はピアノのパガニーニになる」って言って、そこから自分の核になる方向が決まっていったっていう。色んな人の伝記とかを読んでいても、二十歳っていうのはそういう時期なんだなって思います。その時期にあった大事に温めていたものが、将来に必ず結び付いていくんだと感じます。

 

 

 

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ザルツブルクモーツァルトカラヤンを生んだオーストリアの都市
Q. 今回のテーマは「旅」ですが、音楽の「旅」にまつわる思い出などがあったら教えてください。

(武田)「美しく青きドナウ」に関して、オーストリアザルツブルクという都市に住んでいました。ウィーンも電車で2時間くらいのところなのでよく行って、それから彼はロードバイクが好きで、自転車に乗りながらピアノ弾いてるみたいな感じだったんですけど、自転車の競技でウィーンの近くまで行ったりしてました。あちこちに豊かな自然もあり、石畳の街に素敵なオペラハウスもある、っていうのが共存しているのがヨーロッパの感じなんですよね。「モルダウ」も、河だけど途中にお城が見えたり、プラハの都市に入っていったり。私達が住んでいたアパートは、6階くらいだったんですけど、見下ろすと川が見えてすごく素敵なところだったんです。その川のきらきらした様子とか、流れの音とか、そういうものもヨーロッパの景色として思い出します。

(中井) 旅行した町の空気感や空の色は例えば日本とザルツブルクと南フランスとでは全然違うし、そういうものが音楽の響きと結びついているというのはある気がしますね。

(武田) フランスといえば「動物の謝肉祭」はフランス人の作曲家サン=サーンスが書いてるんですけど、それこそフランス人の友達とデュオをしたりとか、各地の色んな演奏会に呼んでもらったりしました。その友達もすごくおどけた面白い人で、フランス人の特有のユーモアが演奏にも反映されているのを見てあ~なるほどって思ったり、フランス人的な軽やかさっていうのを私達も感じましたね。演奏会のあと長々とワインを飲んでたりしても次の日にまたきちんと演奏会をやってたりもしました(笑)

 



 

Q. お二人のそれぞれの音には、お互いに見てどんな性格がありますか? コンサートの時に注目して聴いてみたいです。

(武田) 私達は性格が似てる所もありつつ違う所もあり、まあ似てると言われるんですけど(笑)、彼はやっぱり、ふわ~っとおおらかですよね(笑)。だから時間の感覚も多少違うときもあるんですけど(笑)、そこの良さっていうのはやっぱり音に表れていて、じわ~っと聴いていると味があるっていう、そういう感じを私は強く感じます。指をとーんと置いただけでも、なんかこう重力に逆らわない良さみたいなのがあって、それは私もなかなか真似できなくて、いいな~と思うところです。

(中井) 美和子の良い所はやっぱり華やかさとか、明るい音色っていうのに特別なものがあるのかなと思いますね。音や響きの違いは持っている手の大きさや骨格や関節の硬さなどで決まる部分もありますが、やっぱり性格とか感じていることからくる持ち味っていうものがあり、そうした違った音色が、持ち味を活かしながらいかにミックスされていくのか感じてもらえたら面白いと思います。

 

 

 

Q. クラシックの演奏家として日本人であること

(武田) やっぱり私たちは、日本人だっていうその誇りというのは、海外もけっこう長かったのですごく思ってて、舞台に出たら、ヨーロッパの方々のなかで、どれだけ、、心のこもった演奏ができるかとか、自分たちの素性といったものが出せるかということは、ずっと大事にしていたことなんです。

それがヨーロッパの人たちにどう通じるかということも必要で、だから、ヨーロッパで勉強してきた、クラシックを音楽表現する上で大事な抜けちゃいけないところもきちんと踏まえた上で、私達自身がアピールできることっていうのは本当によく考えてたんですよね。

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それは緻密さ、積み上げている精度や完成度の高さなどもそうだと思います。でもそれ以上に、日本人はよく「まじめだ」なんて言われるけど、それ以上に、もっと〈日本人の表現〉がある。もっと自由だし、私たちだって、すごくユーモアもあるし、外国の方のオーバーなアクションに負けず(笑)、やれることもある!って思います。でもそれはただオーバーにやるっていうことではなくて、本当に本質から近づいた時に出てくる、人と人が共鳴し合う、共感し合う、琴に触れたいっていう、そういう、本気でやりたいっていうことを、海外では特に気にしていました。

 

(中井) 日本人だから見えるものっていうものもあると思います。当たり前なんだけど例えばドイツ人とフランス人っていうのは違っていて、なかなか一緒にならないようなところがある。だけどもしかしたら日本人はどちらにも同化できる、またはそういうふたつの文化を客観的に見比べることができるからこそ、それらをより的確に弾き分けることもできるんじゃないかなと思います。良くも悪くもドイツ人がフランスものを弾いてもドイツ的になるしフランス人がドイツものを弾いてもなんとなくフランスっぽくなってしまう。ヨーロッパの人からするとなんとなく日本人っぽく弾いていると思われているのかもしれないけど、そうじゃない部分で見えるものがあると思いますね。

 

(武田) でもヨーロッパの人も、例えばフランス人はよく日本の文化や日本のことを理解しようとしてくれていたり、もちろんたくさん通じるものもあると思いますね。

 

 

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インタビューは以上になります! 和やかに温かく色々な質問に答えていただいて、おおげさな言い方ですが幸せな時間でした。お話を伺っていると、作曲家や、楽曲に込められたメッセージ、演奏への姿勢、演奏を届ける人々、自分たち自身のアイデンティティにまで、お二人がとても誠実に向き合って取り組まれていることがこちらにも伝わり、だからこそ、このお二人の落ち着いた雰囲気であったり、舞台上でのエネルギーに満ち溢れた演奏も出来るのだろうと感じました。いよいよ今週末、素敵なデュオのお二人の演奏をお楽しみください! ご来場お待ちしております!

 

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文責 : 佐藤(人文2年)