桜はすっかり散って青々とした葉が茂っていますね。対面授業も徐々に始まり、大学を訪れるたびに若く初々しい新入生の姿が多く見られてこちらもわくわくしています。
今回は、第10回つくばリサイタルで演奏される江藤作品の解説第一弾です!
江藤光紀 / 弦楽四重奏曲第一番 Echoing Voices (2015)
この作品は、第4回つくばリサイタルシリーズ「ベートーヴェン、晩年のクァルテット」(2015)において、クァルテット・エクセルシオによって初演されました。
当時の様子はこちらの記事に詳しく載っています。
作曲者は、つくばリサイタルシリーズの生みの親であり当団体顧問の江藤光紀です。
江藤先生は、筑波大学人文社会学系の准教授でヨーロッパのオペラなど文化芸術について研究されています。作曲は学生時代から趣味として始められたそうです。
今回のリサイタルでは、江藤先生が初めて書いた弦楽四重奏曲がカルテット・アマービレによって再演されます。クァルテット・エクセルシオの手でこの世に誕生した楽曲に、今回新たな命が吹き込まれるということです!
同じ楽曲でも演奏家によって様々な表情が引き出されるのが音楽の魅力の一つでもあります。今回のブログでは、2015年のクァルテット・エクセルシオによる演奏を振り返りながら楽曲について紹介していきたいと思います。
先入観を持たずにカルテット・アマービレの演奏を聞きたい方は、5/22(土)開催の第10回つくばリサイタルに足を運んでからこちらをお読みください!
それでは、さっそく楽曲の紹介に移ります!
作曲者の江藤先生は、第4回つくばリサイタルのパンフレットでこの曲目に関してこう書き記しています。
曲はアレグロの第一部、メロディアスなアンダンテを挟んでさらにゆっくりとしたアダージオの三部で構成されています。前の部のテーマの一部を次の部に含めることで、統一感がでるように工夫しました。第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンとの掛け合い、こだまがあちこちに出てきて、タイトルはこれに由来します。第一部や結尾部は冬の木枯らしのイメージです。
これを踏まえて、第4回つくばリサイタルでの実際の演奏を録音したものを聞いてみました!
第一部は緊張感のある、しかし勇ましいメロディーで始まります。作曲者は「冬の木枯らし」をイメージしたそうですが、私はある一人の男が冷たい森のなかを一歩一歩進んでいくような情景を思い浮かべました。8分の6拍子を刻む音が、森の木々や葉のざわめきのようで、たしかに木々の間を木枯らしが吹き荒れているようにも感じられます。
厳しく吹き荒れた木枯らしはやがて去り、静けさと共に曲は第二部へ。
第一部とは一転して、穏やかな美しいメロディーとハーモニーが響きます。冷たい風が止み、まるで暗い森に木漏れ日が差し込むようです。しかし、どこか不安げな雰囲気も醸し出されます。
柔らかなハーモニーから力強いtuttiが始まり、クライマックスへと向かう第三部へ移ります。私の感覚ですが、曲調はどこか印象派のような感じを受けます。作曲者が述べているように、スケールの掛け合いが森の中で共鳴し合うこだまのようです。上昇系のスケールによって景色は上へ上へと開けていき、その後の壮大で豊かな響きは木枯らしに吹かれながら悠然と空を飛ぶ鳥の姿を思わせます。やがて風はゆるやかに止み、森は静けさを取り戻して終結へ。
これが、私が録音を聞いてみて抱いた印象です。いかがでしょうか?
音楽を言葉だけで表現するのはとても難しいですね。それに、聞く人によって印象はまったく異なるものだと思います。さらに、今回は「芸能人格付けチェック」やEテレ「クラシックTV」などに出演し、国内外で大活躍のカルテット・アマービレが演奏してくださいます!果たして、この楽曲をどのように表現されるのでしょうか。
とある大学教授が作曲した楽曲を一流の奏者はどのように演奏してみせるのか。
これはつくばリサイタルシリーズでしか体験できません!ぜひ第10回つくばリサイタルシリーズに足を運んでください!
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文責:大吉