つくばリサイタルシリーズ公式ブログ

12月12日(金)【小林壱成ヴァイオリン 心震わす名曲との出会い】https://teket.jp/1479/56738

曲目紹介No.2 江藤光紀:弦楽四重奏第4番「シュンポジオン」(新作)

こんにちは!つくばリサイタルシリーズ実行委員会です!

 

 

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皆さまのご来場をお待ちしております♫

 

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本日は、前回に引き続き、当日のプログラムから、我らが実行委員会顧問の江藤光紀先生の新作、弦楽四重奏第4番「シュンポジオン」をご紹介します!

 

江藤光紀:弦楽四重奏第4番「シュンポジオン」(2024)

実行委員会の顧問・江藤光紀先生が毎回新作を書き下ろしている、つくばリサイタルシリーズ。本作は、東洋哲学の「陰陽」と古代ギリシャの哲学的対話を思わせる題材を融合させた意欲作です。タイトルになっている「シュンポジオン(Symposion)」という言葉は、古代ギリシャにおける「酒宴」や「饗宴」を指します。プラトンの対話篇『饗宴』で描かれているような、深遠な対話とともに芸術が人々を結び付ける場を象徴している様子が想起されます。一方で、第一楽章には「陽の極、陰の極」という東洋思想を思わせるタイトルが付けられています。東西の哲学・思想を結び付けるような「対話」や「対極の融合」といったテーマを感じさせます。また、弦楽四重奏というアンサンブル形態自体も「4人の音楽家が対話を重ねる」構造を持っています。

 

第1楽章:「陽の極、陰の極」

やや抑えめの導入部から始まり、すぐに躍動的なリズム(三連符)が場面を切り開きます。激しいダイナミクスの変化や半音階的な和声の使い方は、「陽と陰」という相反するエネルギーの衝突を想起させます。ときに深く静まり込み、ときに力強く噴き上がる音楽の波によって、陰陽のせめぎ合いがドラマティックに展開されていきます。

 

第2楽章:「古い映画の情景」

一転して、懐かしさを誘う旋律やピチカートが印象的な楽章です。淡いセピア色の映像を思い起こさせる一方、モダンな半音階的処理がさりげなく挿入されることで、単なる懐古調にとどまらず、過去と現在が交錯する独特の空気が保たれます。聴いている内に、古いスクリーンをのぞき込むように情景へと引き込まれていきます。

 

第3楽章:「フィナーレ:シュンポジオン」

作品の締めくくりにふさわしく、冒頭から躍動的なリズムと壮大な和音の応酬が目を引きます。rit.やA tempoの繰り返しによる「溜め」と「解放」が効果的に使われ、聴き手の期待を高めたまま、一気にクライマックスへ突入する構造になっています。最後に向けて大きく展開されるユニゾンや分厚い響きは、まさに「饗宴」の名にふさわしい熱狂的な余韻を残します。

 

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陰陽の対立と融合、そして郷愁を誘う情景から総合的な「饗宴」へ至る流れは、多彩なアイデアと緻密なアンサンブルによって描かれています。各パートが交わす対話から生まれる豊かな広がりこそが、この弦楽四重奏の最大の魅力でしょう。

 

ぜひ、会場でお聴きになってみてください!

 

次回もお楽しみに!

 

文責:飯沼(人文学学位P・M2)