つくばリサイタルシリーズ公式ブログ

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曲目紹介No.3 ラフマニノフ:悲しみの三重奏曲第2番

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こんにちは。つくばリサイタルシリーズです!今回は曲目紹介最終回です。

最後を飾るのは、2023年に生誕150周年を迎えたロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフ作曲の「悲しみの三重奏曲 第2番」です。

 

この曲はラフマニノフの中でも初期の作品であり、ラフマニノフが敬愛していたチャイコフスキーの死を悼んで1893年に作曲されました。1907年と1917年に2度改訂されており現在主に演奏されているのは1907年のものです。

 

追悼曲としてピアノ三重奏曲あるいは室内楽曲を作曲することがロシアの伝統となったのは、チャイコフスキーモスクワ音楽院の設立者ニコライ・ルビンシテインのために作曲したピアノ三重奏曲イ短調「偉大な芸術家の想い出」がきっかけです。ラフマニノフチャイコフスキーのためにこの曲から強く影響を受けて「悲しみの三重奏曲第2番」を作曲し、後の作曲家たちに伝統を引き継ぎました。恩師の死に対する悲しみや悔しさをぶつけるかのように、ラフマニノフは1ヵ月あまりの短期間でこの曲を完成させました。

楽曲は、第1楽章:モデラート Moderato

第2楽章:クヮジ・ヴァリアツィオーニ Quasi variazione

第3楽章:アレグロ・リゾルートAllegro risoluto

の3楽章からなり、演奏時間は約50分と室内楽としてはボリュームたっぷりの大作となっています。

 

第1楽章のモデラートは静かに繰り返されるピアノのフレーズから曲が始まり、バイオリンとチェロが叙情的にメロディーを歌い継いでいきます。三つの楽器がまるで会話のように重なり、だんだんと激しさを増していきます。弦楽器をピアノが引き立てる場面や反対にピアノの力強い旋律に弦楽器が合いの手を入れる場面があり、聞き飽きない構成になっています。

第2楽章はへ長調で8つの変奏から成っています。この楽章の主題は、チャイコフスキーが気に入り初演を約束しながらも果たせなかった『管弦楽のための幻想曲「岩」』の主題とよく似ています。ゆったりとした美しいピアノの独奏から一転、曲調が急展開し細かい音符で慌ただしくメロディーが駆け抜けます。この後もピアノの独奏と3つの楽器の合奏を繰り返し、ドラマチックに展開していきます。

第3楽章は約7分と他の楽章に比べると短いものの、緩急のコントラストがはっきりしています。中盤以降は冒頭と同じメロディーをピアノが奏で、第1楽章とは逆に徐々に落ち着いていきます。ラフマニノフの特徴である悲しくもロマンチックなメロディーにご注目ください。

精緻な演奏を得意とする葵トリオの魅力が光る曲で濃密な時間をお楽しみください。

 

さて、これで全曲の紹介が終わったわけですが、古典の名曲から現代音楽までカバーし、かつ葵トリオの演奏をじっくりお楽しみいただけるプログラムになっているのがお分かりいただけるのではないでしょうか。いよいよ今週末が本番です。お楽しみに!

 

文責:加藤、畑