こんにちは! つくばリサイタルシリーズ実行委員会です。
前回に引き続き、今回もコンサートの曲目解説をします。
人種のるつぼと呼ばれるアメリカは、19世紀から20世紀初頭に、他民族国家を背景としたジャズなどの新しい音楽を生み出しました。そして1892年にチェコからアメリカに渡ったドヴォルザークも、その作品にアメリカらしさを取り入れていきました。
ドヴォルザークは、アメリカに渡って初めての夏の休暇を、チェコからの移民が多く住むスピルヴィルという町で過ごしました。同郷の人たちと夜遅くまで語りあった、かどうかはわかりませんが、とにかく彼は故郷への懐かしい思いをそのままに、15日間ほどで「弦楽四重奏曲『アメリカ』」を完成させたといいます。一見『アメリカ』は西洋音楽の型通りの進行で、アメリカらしさをあまり感じないのですが、聴いているうちに、そのメロディーの郷愁にひき込まれます。実はそのメロディーに、ドヴォルザークがアメリカで出会った「黒人霊歌」のエッセンスが含まれているのです。
黒人霊歌は、アフリカ大陸からアメリカ大陸に奴隷として強制連行された黒人たちから生まれた音楽です。代表曲に「聖者の行進」などがありますが、明るい曲であってもどこか愁いを帯びているのが黒人霊歌の特徴です。故郷を懐かしむドヴォルザークが、同じく故郷に思いをはせる黒人たちの音楽に影響を受けたのも必然といえるかもしれません。
私はアメリカに何の縁もゆかりもありませんが、この『アメリカ』を聴くとやはり、どこか懐かしい思いがこみ上げてきます。アメリカと冠された音楽で故郷を想いだすのも不思議な気がしますが、クァルテット・エクセルシオの演奏で、みなさんの心にも懐かしの風景が思い浮かぶ、かもしれませんね。
(文責:A・N)