つくばリサイタルシリーズ公式ブログ

2024年6月9日(日) 第2回TRSサロンシリーズ『荒木奏美 染みわたるオーボエの調べ』 チケット→https://teket.jp/1479/33549

楽曲紹介Part.1 スメタナ「モルダウ」ー交響詩「我が祖国」より

…この河は、二つの水源から発し、次第にその幅を増してゆく。両岸には狩の角笛と田舎の踊りの音楽がこだまする。ー月の光、妖精の踊り。ーやがて流れは聖ヨハネの急流にさしかかり、波はしぶきをあげてとび散る。ここから河はプラハ市に流れこみ、ここでは、古く貴いヴィシェフラトに敬意を表する…

 

こんにちは!実行委員の勝俣です。皆さんは年末をいかがお過ごしですか。今年も寒いですね…

さて、今回は、第11回つくばリサイタルシリーズの演奏曲目の2曲目、スメタナ作曲「モルダウ」を紹介したいと思います。

この曲は、かつて中学生だった自分がものすごい衝撃を受け、クラシック音楽にのめり込むきっかけになった曲でもあります。「モルダウ」の魅力が少しでもお伝えできれば幸いです。では、まずは「モルダウ」の前提にある事柄を説明しましょう。

 

スメタナとは?

スメタナ(1824-1884)はチェコを代表する作曲家です。19世紀、世界各国にナショナリズムの風が吹き荒れるなかで、スメタナチェコ民族の音楽を作り上げました。スメタナが作曲した有名な曲として、交響詩「我が祖国」(我が祖国とはもちろんチェコのことを指します)、弦楽四重奏第一番「わが生涯より」、歌劇「売られた花嫁」が挙げられます。

・「モルダウ」とは? 

モルダウ」はスメタナ作曲の交響詩「我が祖国」(1879年)を構成する楽曲のうちの2曲目の楽曲です。「モルダウ」はヴルタヴァ川の流れを標題とした楽曲です。「モルダウ」というのはヴルタヴァのドイツ語表記であり、日本ではこの曲に対して「モルダウ」「ヴルタヴァ」の両方の表記がされますが、今回は第11回つくばリサイタルシリーズのチラシに合わせて「モルダウ」と表記します。

交響詩「我が祖国」とは?

交響詩「我が祖国」は1879年にスメタナによって作曲されました。「ヴィシェフラド」「モルダウ(ヴルタヴァ)」「シャールカ」「ボヘミアの森と草原から」「ターボル」「ブラニーク」という題の、チェコの自然や歴史を題材とした6つの楽曲から成り立っています。どの曲も名曲なので、ぜひ聞いてみてください。

交響詩とは?

交響詩とは、特定の標題を持ったオーケストラの楽曲形式のことを指します。例えば、交響詩「我が祖国」は、全体としてチェコの自然や歴史という標題があり、「モルダウ」がヴルタヴァ川の流れを表象しているように、「我が祖国」を構成するひとつひとつの楽曲にも標題があります。交響詩は、特定の標題を持つためにクラシック音楽のなかでは非常に聞きやすく、クラシック音楽をこれから聞いてみたいという人にはもってこいのジャンルだと思います。

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モルダウ」読解!

それでは、「モルダウ」の中身に入っていきましょう。スメタナは「モルダウ」の標題の意味について自身の言葉を残しており、それがこのブログの冒頭に引用したものになります。まさにこの言葉通りに音楽が作られているので、この言葉を細かく見ていく形で「モルダウ」の流れを紹介したいと思います。

①この河は、二つの水源から発し、次第にその幅を増してゆく。(ホ短調

曲の冒頭は、ヴルタヴァ川の二つの水源をフルートとクラリネットが表します、二つの楽器の音色はだんだんと交差しオーケストラは厚みを増し、しまいにはオーボエとヴァイオリンがブルタヴァ川の清らかな流れを美しい旋律によって示します。

②両岸には狩の角笛と田舎の踊りの音楽がこだまする。(ハ長調

ヴルタヴァ川両岸での人々の生き生きした生活をオーケストラが描きます。まずホルンが勇ましい旋律で狩の様子を示した後(ホルンは元々狩猟に使われていた楽器です。)、弦楽器によるリズミカルで楽しい旋律によって農村の結婚式の祝いの踊りが示されます。

③ー月の光、妖精の踊りー(変イ長調

踊りの旋律が静かになり、雰囲気は一転します。夜になり、月の光に照らされたブルタヴァ川の上で妖精が踊る様子をヴァイオリンの幻想的な旋律が奏でます。

④ーやがて流れは聖ヨハネの急流にさしかかり、波はしぶきをあげてとび散る。(ホ短調ホ長調

夜が明けると、再び①の旋律が現れるが、途中でヴルタヴァ川は急流にさしかかり、また雰囲気が一転してオーケストラ全体が嵐のような強奏を奏でます。

⑤ここから河はプラハ市に流れこみ、ここでは、古く貴いヴィシェフラトに敬意を表する。(ホ長調

急流を抜け、ヴルタヴァ川はプラハ市に流れ込み、オーケストラは①の旋律を長調にした喜びの旋律を強奏します。次第にヴルタヴァ川から古城ヴィシェフラトが見えてきて、「我が祖国」第一曲目「ヴィシェフラト」の旋律が堂々と出てきます。そして大円団のなか、少しの切なさを残して曲は終わります。

 

以上が「モルダウ」の内容です。「モルダウ」はさまざまな楽器の特性が活かされ、オーケストラの魅力がふんだんに詰まっている楽曲といえるでしょう。

 

さて、第11回つくばリサイタルシーズでは、中井恒仁&武田美和子ピアノデュオが連弾でこの曲を演奏します。お二方によるピアノがこの管弦楽曲をどのように演奏するのか、私は一委員ながら楽しみでなりません。ピアノの無限の可能性を感じる演奏会になるかもしれませんね!

 

(文責:人社 勝俣)

冒頭のスメタナの言葉は『最新名曲解説全集第4巻管弦楽曲 I』音楽之友社、1980年より引用。

 

part2はこちら↓

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