つくばリサイタルシリーズ公式ブログ

2024年6月9日(日) 第2回TRSサロンシリーズ『荒木奏美 染みわたるオーボエの調べ』 チケット→https://teket.jp/1479/33549

新作について   江藤光紀

つくばリサイタルシリーズでは毎年私の新曲を発表させてだいていますが、今年は弦楽四重奏第二番「うつし世は、ゆめ」を初演していただきます。

 

この作品は三つの楽章からなっています。

 

第一楽章「あの丘の向こうに」は小高い丘に向かって一心不乱に馬を駆る騎士を描いています。いただきに近づくとよい眺望が見えてくるのですが、騎士は丘を越えて去っていってしまいます。

 

第二楽章「聖なる夜のまぼろし」ではゆったりとしたメロディーが突然不穏な気配によって中断されます。中間部の祈りを挟んで、再現部ではこの不穏な気配はまばゆい光に変わります。

 

第三楽章「光あふれる庭」は、去っていったものとの再開を描いています。厳しい行進曲が緩やかな旋律へと変化しますが、それは魂の帰還の予感です。転調を繰り返しながら輝かしい終結部に到達し、喜びにあふれる邂逅を果たします。

 

タイトルは江戸川乱歩の揮毫「現世は夢、夜の夢こそまこと」からいただきました。

 

今年はリサイタルシリーズの運営体制も衣替えし、実行委員の学生が一生懸命活動しているのに刺激を受け、若い人たちに楽しんでもらえる躍動感があってドラマティックな作品に仕上げたいと思いました。

 

また一昨年、弦楽四重奏第一番Echoing Voices を美しく初演してくださったクァルテット・エクセルシオのみなさんの生き生きとした演奏を思い浮かべながら筆を進めました。感謝を込めて本作を献呈させていただきます。

 

曲の雰囲気を知ってもらうために、聴きどころを楽譜から直接生成した自動演奏ファイルで抜粋しました。実際の演奏はもっとずっと味わい深く表情豊かで感動的になります。ぜひ会場に足を運び、その迫力を直接体験してください。

 

音声サンプル 

第一楽章 あの丘の向こうに

第二楽章 聖なる夜のまぼろし

第三楽章 光あふれる庭